ベルファスト

第94回(2022年)アカデミー賞®7部門（作品賞/監督賞/助演女優賞/助演男優賞/脚本賞/主題歌賞/音響賞）ノミネート作品。

北アイルランドベルファスト出身のケネス・ブラナー（製作・監督・脚本）自身の幼少期を綴った自伝的作品「ベルファスト」をパーソナリティー斉藤洋美が紹介。

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〈ストーリー〉

主人公はベルファストで生まれ育った9歳の少年バディです。

ベルファストは住んでいる人が皆で笑って支えあって家族のような町。そしてバディにとっては大好きなおじいちゃん、おばあちゃん、イギリスに出稼ぎに行っているお父さん、厳しいけど愛情深いお母さん、優しいお兄さん、そして友達に囲まれていました。
映画や音楽ダンスを楽しみ、大好きな女の子もでき、たくさんの愛に包まれて日常生活を送っていました。

しかし、1969年の暑い夏の日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまいます。プロテスタントの武装集団が町のカトリック住民への攻撃を始めたのです。皆顔なじみで隣近所仲良しだったのにこの日を境にベルファストは分断されていきます。

暴力と隣り合わせの日々の中、バディと家族はこの故郷を離れるかどうかの決断に迫られます。

〈Hiromi’s Eye〉

★舞台は1969年、激動の北アイルランドのベルファスト。この時代は北アイルランド紛争へ突入して行った時で当時9歳だったケネス・ブラナー監督が体験したことを9歳の主人公バディの目線を通して描かれていきます。しかし、辛いことばかりではなく、どれほど日常のたわいもない会話が幸せなことなのか、一緒にお茶を飲んで映画の話をしたり音楽について語り合ったり何気ない日々のその瞬間瞬間がどんなに愛おしいものなのかを教えてもらえる作品です。

★ブラナー監督は2020年に起きたパンデミックの最初のロックダウンが始まった頃にこの脚本を書き始めたそうなのです。ロックダウンの間、家にこもることを強いられたことで、幼い頃に故郷ベルファストで暴動が起きて同じように家に潜んでいた時の記憶が蘇ってきたそうです。そして9歳の自分に戻り、両親はどんなことを乗り越えようとしていたのか、そして色々と辛かった中で、楽しかったこと、美しい何かが生まれることもある。世界中が喪失感を感じている時に何かそういったものを生み出して行きたかった、ということで書いてくださいました。

★キャストの皆さんは、9歳の少年バディを演じたのはこの作品がデビューとなるジュード・ヒルくん、自然体で本当に素晴らしい演技でした。

そしてブラナー監督が大人の出演者には信憑性を持たせたかったということで・・・
父親はベルファスト出身の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のジェイミー・ドーナンさん、母親はアイルランド出身のカトリーナ・バルフさん、おじいちゃんはベルファスト出身の「ミュンヘン」のキアラン・ハインズさん、そしておばあちゃんはダブリン出身のジュディ・デンチさんが扮しています。皆さん本当にその時代を生きていたそのままの方という感じでした。

★映像も現在のベルファストの風景が映し出される冒頭と締めくくりはカラーなのですが、それ以外はモノクロで綴られていきます。まるで、神様の目線？と言うように、斜め上からだったり、窓越しだったり、シンメトリーだったり色々な角度からの撮影が芸術的で本当に美しかったです。

★この作品には映画の話題がたくさん登場します。
・「恐竜100万年」(1967)
・「７人の愚連隊」(1963)
・「チキチキ・バンバン」(1968)バディがおばあちゃんに一緒に観にいこうよ〜と誘うのですが・・・（涙）。
・「失われた地平線」(1937)おばあちゃんが好きだった映画の話をバディにしてくれます・・・ここも（涙）。

★おじいちゃんとバディの会話、おばあちゃんとバディの会話がユーモアがあって、温かくて大好きです。

★おじいちゃんがおばあちゃんに「人が何かを学ぶには胸の高鳴りが必要さ」と言って、胸が高鳴る時の話をするシーンが最高すぎて、そこのシーンだけでも何百回も観ていたいです。

★スクリーンの中にマグカップが必ずと言っていいほど写っていました。生活の中にいつもマグカップがあって、温かいお茶を飲んでいたんですね。どんな時も、お気に入りのマグカップに注がれた温かいお茶はを飲むと、心が豊かになりますよね。

★ケネス・ブラナー監督、ありがとうございます。