パーソナリティー斉藤洋美が日本で公開される初の南米ウルグアイの映画『ウィスキー』を紹介。
〈ストーリー〉
舞台はウルグアイ。その街で小さな靴下工場を営む無口で堅物なハコボ。
その工場で働く生真面目な中年女マルタ。
この二人は、一緒に仕事をしていても、必要な会話を交わす以上の関係にはならず、朝になるとシャッターを開け、仕事に就くという毎日変わらぬ生活を送っていた。
そんな二人のもとへ、疎遠だったハコボの弟エルマンがブラジルから訪ねてくることに・・・。
ハコボはこの弟エルマンが滞在中、マルタに妻のふりをしてほしいと頼み、奇妙な3人の生活が始まった・・・。
このひょんなことから始まったウソが3人の人生をどのように変えてしまうのか・・・。
〈Hiromi’s Eye〉
人間の顔って口角が上がっているかいないかで、 表情がこんなにも変わってしまうものなのね・・・。
とつくづく納得してしまった映画です。
突然ですが「ウィスキー」とちょっと言ってみて下さい。
そして、そのまま、「ウィスキー」の「キー」と言っているままの 口でいて下さい。 口角が上がっていい顔になっているはずです・・・きっと。
この「ウィスキー」は南米ウルグアイで写真を撮る時の合い言葉、日本でいうところの「ハイ、チーズ」の役割を持っているんです。
笑い方すら忘れてしまっているような、堅物の中年男と無口な中年女が、 「ウィスキー」と言って作り笑いをしながら写真を一緒に撮った時・・・
それは作り笑いだったかもしれないけれど、二人とも良い顔しているのです。
その瞬間だけでも、何か心の奥のものが動いたはず・・・。
ちょっとしたウソから、見えなかった人生の色々なものや、心の中の忘れていた想いなどがが見えてきて、それぞれの日常が変わり始めます。
セリフが少なく、それぞれの心の変化を表情で読み取り、あとは観る側の想像にまかせられてしまうけれど・・・
説明の多い作品に慣れてしまっている私は、とても新鮮でした。
でもね、ラストシーンのそれぞれの行き先や、あの時のあの表情はこういう解釈でいいのかな~?とか、誰かに確認したくて、見終わってから、気になって気になって仕方がないのです。
この作品を観た人と語り合いたいな~!という気持ちにさせられてしまう作品です。
でも、口角が上がっているだけで、幸せそうに見えるのは本当に不思議。
ではもう一度ご一緒に「ウィスキー」。
南米ウルグアイの映画が日本で公開される初の作品です。
(2004年カンヌ国際映画祭 オリジナル視点賞、国際批評家連盟賞、2004年東京国際映画祭 グランプリ、主演女優賞)
〈みどころ〉
日本のちょうど裏側の国、ウルグアイ。実はウルグアイ、年に1本も映画が作られて いない国なんです。そんな国から、映画が大好きで大好きで仕方がない~!というファン・パブロレベージャとパブロ・ストールが現れて撮ってくれた作品なのです。
弱冠30才という若さで、2作目となるこの作品で数々の賞を受賞してしまいました。
第一回サッカーワールドカップが開催され、優勝した国ウルグアイ!
この作品を観ると、ウルグアイのことをもっと知りたくなってしまいます。
映画の中でウルグアイにふれて下さいね。
そこでちょっと、豆知識!
ウルグアイの国民的な飲み物マテ茶。
このマテ茶を飲む時にはボンビージャ(ストローのようなもの)を使います。
何かを分かち合いたいと思う時、ひとつのボンビージャでマテ茶を廻し飲みするそうなのですが、さて、3人でお茶を飲むシーンがあります。
ハコボがマテ茶をボンビージャで飲んでいるのですが・・・。
つづきは是非・・・・。
〈お気に入り〉
「ウィスキー」と言って一緒に写真を撮るシーン。
本当に良い顔してます。
マルタがどんどん可愛くなっていくのをお見逃しなく。
サッカーのシーンでは無口なおじさん達が、熱く熱くもりあがっていて、さすがサッカーの国!と笑ってしまいました。
英題:Whisky
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
脚本:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール、ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ
出演:
- アンドレス・パソス
- ミレージャ・パスクアル
- ホルヘ・ボラーニ
音楽:バルバラ・アルバレス
製作年:2004年
製作国:ウルグアイ・アルゼンチン・ドイツ・スペイン合作
日本公開:2005年4月29日
配給:ビターズ・エンド
上映時間:94分
第57回 カンヌ国際映画祭(2004)
- ある視点部門 オリジナル視点賞